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対馬には「わだつみ海神神社」として知られる「和多都美(わたづみ)神社」と「海神(わたつみ)神社」というよく似た名前の神社が2社あります。全国一宮を巡拝する人や御朱印巡りをする人にとっては、この2社は「何が違うのか」「どちらが一宮なのか」「どちらも御朱印をいただけるのか」「参拝は禁止されていないか」といった疑問や不安を感じているのではないでしょうか。
対馬は日本神話の原風景が色濃く残る島であり、竜宮伝説や海上安全の信仰、延喜式内社や一宮といった歴史的背景が複雑に絡み合っています。一方で、近年は観光マナーの問題から参拝制限もあり、古い情報のまま訪れてしまうと戸惑うことも少なくありません。
この記事では、筆者が実際に対馬を旅して和多都美神社と海神神社を参拝し御朱印を授与いただいた経験を踏まえ、これら対馬わだつみ海神神社を正しく理解し、意義深い参拝と御朱印の拝受のために必要な知識をわかりやすく解説します。対馬が初めての方でも、この記事を読み終えた頃には全体像がしっかり見える構成になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
- 本記事を読んでわかるポイント
- ・対馬わだつみ海神神社2社の歴史的背景と神話との関わり
・和多都美神社と海神神社の見どころ
・和多都美神社と海神神社の御朱印情報
・対馬わだつみ海神神社を訪れる前に知るべきマナーと注意点
対馬わだつみ海神神社の神話と歴史的背景

この章では、「和多都美(わたづみ)神社」と「海神(わたつみ)神社」という2つの社を貫く「わだつみ信仰」の根幹について解説します。対馬は地理的に朝鮮半島と九州の中間に位置し、古代から海上交通の要衝として栄えてきました。そのため、海の安全や外敵からの防御を祈る信仰が極めて重要であり、わだつみ海神神社の存在は島の歴史そのものと深く結びついています。
和多都美神社: 公式サイト
*本記事では「和多都美神社」と「海神神社」を総称して「対馬わだつみ海神神社」と表記させていただいております。
対馬わだつみ海神神社と伝承
対馬わだつみ海神神社を語る上で欠かせないのが、『古事記』や『日本書紀』に描かれる山幸彦・海幸彦神話です。兄の海幸彦から借りた釣り針を失った山幸彦(彦火火出見尊)が、海の神・豊玉彦尊の宮である海宮、いわゆる竜宮へ赴く物語は、日本神話の中でも特に象徴的な場面として知られています。対馬、とりわけ和多都美神社が隣接する浅茅湾周辺は、この海宮伝承の地とされ、和多都美神社の由緒の核となっています。
豊玉姫命は海神の娘として描かれ、山幸彦との婚姻を通じて天皇家の祖先につながる存在です。この系譜は、わだつみ海神神社が単なる地域信仰にとどまらず、日本国家の神話的正統性にも関わる重要な位置付けを持つことを示しています。対馬では古くから漁業や航海に携わる人々が多く、海上安全や大漁祈願の対象として、わだつみ信仰が生活に密着した形で根付いてきました。
ポイント: わだつみ海神神社の伝承は、神話・生活信仰・国家形成が重なり合った極めて重層的な背景を持っています。
延喜式内社 としての和多都美神社

対馬わだつみ海神神社の1社、和多都美神社は、『延喜式神名帳』に記載された式内社の論社とされており、少なくとも平安時代以前から国家に認識された神社であったことが分かります。延喜式内社とは、朝廷が公式に祭祀を行う対象として認めた神社であり、その数は全国でも限られています。対馬のような辺境の島に、これほど格式の高い社が存在すること自体、当時の対馬が外交・防衛上いかに重要であったかを物語っています。
和多都美神社の特徴は、中央の権威だけでなく、海人族や地元住民の信仰が色濃く反映されている点です。阿曇氏に代表される海人集団との関わりや、磐座信仰、禁足地の存在など、古層の祭祀形態が現在も部分的に残されています。これにより、和多都美神社は「民の信仰」を体現する存在として語られることが多いのです。
補足: 延喜式内社の記載内容は、現在も研究が続いており、和多都美神社と海神神社の比定問題は神社史研究の重要テーマの一つです。
和多都美神社の境内で最も印象的なのは、浅茅湾に向かって一直線に並ぶ五つの鳥居です。そのうち二つは海中に建てられており、潮の干満によって姿を大きく変えます。満潮時には鳥居が海に浮かび、まさに竜宮への入口のような光景が広がりますが、干潮時には参道が現れ、鳥居の基部まで歩いて近づくことができます。
この景観は単なる観光的演出ではなく、古代人が海を異界への境界として捉えていた感覚を今に伝えるものです。境内には磐座や巨木、三柱鳥居など、神話的象徴に満ちた要素が点在しており、写真だけでは伝わらない重い空気感があります。現在は立ち入りや撮影が厳しく制限されていますが、それは神域を守るための措置であり、本来の姿に立ち返ろうとする動きとも言えるでしょう。
海神神社は一宮としての格式をもつ

一方の海神神社(正式には「わたつみじんじゃ」、通称「かいじんじんじゃ」)は、対馬国一宮としての格式を持つ神社です。一宮とは、その国で最も社格が高いとされた神社を指し、中世以降は政治的・宗教的な中心として機能してきました。
海神神社はかつて「木坂八幡宮」と呼ばれていました。神功皇后が朝鮮へ出征した帰りに、半島から持ち帰った「八つの旗」をまつった場所とされ、全国の八幡さまの発祥の地としても伝えられています。ところが、木坂八幡宮と呼ばれた時代から対馬国一宮ではあったものの『延喜式神名帳』に記載された式内社にはなっていませんでした。
その後、明治時代に入って木坂八幡宮は先述した和多都美神社と同名の「和多都美神社」に改名され、式内社であり一宮でもあるとして近代社格制度の「国幣中社」を申請しましたが、応神天皇をまつる神社が天皇家と関係の薄い「わだつみ海神」をまつるのは矛盾があるということで却下。そこで祭神に天皇の祖先に当たる豊玉姫命を加えて社名を「海神(わたつみ)神社」と改称。これにより無事に国幣中社に指定され、現在に至っています。
海神神社の社殿は長い石段の先に構えられ、背後の伊豆山そのものが神体山とされるなど、極めて厳格な神域構造を持っています。このような配置は、国家鎮護や外敵防御を祈る「官の信仰」としての性格をよく表しています。実際、対馬は古代から外交・軍事の最前線であり、海神神社は精神的な防波堤の役割を担ってきました。
対馬わだつみ海神神社の見どころ・御朱印情報・注意点
ここからは、実際に対馬わだつみ海神神社を訪れることを想定し、和多都美神社と海神神社それぞれの見どころや御朱印情報、訪問時の注意点を具体的に解説します。特に近年は状況が大きく変わっているため、事前に正しい情報を押さえておくことが非常に重要です。
和多都美神社と海神神社の参拝スタイルと見どころ

対馬わだつみ海神神社の和多都美神社と海神神社は、同じわだつみ信仰を背景に持ちながらも、見どころや参拝体験は大きく異なります。
和多都美神社
和多都美神社では、海中に立つ鳥居が最大の見どころで、満潮時には海に浮かぶような幻想的な風景、干潮時には鳥居のそばまで歩くことができます。これは古代人が海を異界への境界として捉えていた感覚を体感できるものであり、貴重な参拝体験となります。
また、和多都美神社は古事記の「海幸山幸」伝承と結びつく竜宮伝説の舞台とされ、拝殿周辺や裏参道に伝説を伝える石碑や古木が残るため、神話ロマンを感じられます。本殿の裏奥には「豊玉姫命之御陵墓」があり、豊玉姫命への参拝を行うことができます。境内から海沿いに歩いたところには「玉ノ井」など伝承地もあり、見逃せない見どころ、参拝スポットとなります。
海神神社
海神神社は、対馬国一宮として古くから崇敬を集める格式ある社で、主に海上安全や安産などの信仰が厚いのが特徴です。社を取り巻く木坂山の原生林(野鳥の森)や、石段を上る参道の風情、摂社・末社が並ぶ境内の構成など、歴史と自然を同時に味わえる点が見どころです。
現在、海神神社の主祭神は豊玉姫命です。木坂八幡宮と称していた江戸時代までは、八幡神をまつっていましたが、現在は八幡神は祭神から外されているので参拝時には注意が必要です。
和多都美神社と海神神社の御朱印情報

和多都美神社と海神神社とは、上の写真にあるとおり、どちらも御朱印を頒布しています。ここでは、和多都美神社と海神神社とそれぞれについて御朱印情報をまとめます。
和多都美神社の御朱印情報
和多都美神社では、拝殿に向かって左横にある授与所にて御朱印を授与いただけます。授与所の受付時間は、9:00~17:00(12:00~13:00除く)となっています。御朱印のほか、御朱印帳、各種お守りなども、この授与所にて授与いただけます。また、和多都美神社では、オンラインで御朱印・御朱印帳・各種お守りなどを購入できるオンライン授与所(2025年3月24日より一時休止中)も運営しています。
和多都美神社で授与いただける御朱印は、上の写真にある通常版の御朱印のほか、数量限定の特別版御朱印としてツシマヤマネコのデザインされた御朱印、和紙でできた御朱印、切り絵御朱印なども在庫があれば授与いただけます。御朱印の初穂料(御朱印の値段)は、通常版の御朱印が500円、特別版の御朱印は800円~2,000円となります。また、和多都美神社のオリジナル御朱印帳として「対馬ひのきの御朱印帳」(4,000円)も数量限定で頒布されています。
通常版の御朱印については、書き手の方がいらっしゃる場合には、持参した御朱印帳に直書きの方法で授与いただけます。書き手の方が不在の場合、通常版の御朱印については書き置きでのみの授与となります。また、その他の特別版御朱印については、書き置きのみでの授与となります。
海神神社の御朱印情報
海神神社では、入口の鳥居をくぐってすぐを左手奥に入ったところに社務所があり、この社務所で御朱印を授与いただけます。社務所は無人となっており、御朱印は自分で社務所の窓を開けて、置いてある書き置きの御朱印をいただき、初穂料(御朱印の値段)500円を備え付けの箱に納めるセルフ授与の方式です。御朱印は大きめサイズと普通サイズの2種類がありますが、初穂料はどちらも500円です。
このように海神神社の社務所では御朱印がセルフ授与なので、御朱印に記入する参拝日は、後で自分で記入する必要がある点は注意が必要です。御朱印のほか各種お守りなども、この社務所にてセルフで授与いただけます。このように無人運営されているため社務所での受付時間は特に定められていません。
なお、海神神社の社務は和多都美神社で兼務されているようで、上述した和多都美神社の授与所でも海神神社の御朱印を授与いただくことができます(ただし、海神神社を参拝した証明が必要)。海神神社の通常版の御朱印については、和多都美神社の授与所に書き手の方がいらっしゃる場合には、持参した御朱印帳に直書きの方法で授与いただくこともできます。書き手の方が不在の場合には書き置きのみの対応です。また、海神神社の特別版御朱印が頒布されている場合には、和多都美神社の授与所にて書き置きの方法で授与いただけます。
先述した和多都美神社が運営するオンライン授与所(2025年3月24日より一時休止中)では、在庫があれば海神神社の御朱印も購入できます。
対馬わだつみ海神神社を参拝する際のマナーと注意点
神社を訪れる目的としては、信仰の実践として崇敬する祭神を参拝するということのほか、境内と建物により構成された文化財の鑑賞を通じて歴史と文化を学ぶということもあります。しかし、文化財の鑑賞がメインで観光という文脈で神社を訪れる場合でも、本来は信仰の場である神社を訪れるからには、信仰を尊重する最低限のマナーは守らなくてはなりません。
例えば、境内では静粛にする、立入禁止の場所には入らない、などは言うまでもありませんが、鳥居をくぐる前に一礼する、拝殿では二拝二拍手一拝で参拝する、御朱印は参拝を終えた後に授与いただく(ただし現地のルールが優先)などの基本的なマナーは、対馬わだつみ海神神社に限らず必ず守るように心がけましょう。
特に注意すべきは、和多都美神社では、2025年3月以降、氏子、崇敬者以外の境内への立ち入りが禁止されていることです。海中鳥居も含め、神社の建物、工作物等、すべての写真撮影、動画撮影、ライブ配信等が禁止されています。また、国内外バスツアーを含め、観光目的での訪問も全て禁止となっています。
ただし、氏子、崇敬者については、引き続き和多都美神社への参拝が許可されています。ここでいう「崇敬者」とは、「神様に対する尊崇、崇敬の念をもってきちんとお参りしてくれる人」と和多都美神社では説明されています。つまり、上で述べた基本的なマナーを守り参拝するのであれば大丈夫だと言えます。
また、和多都美神社では「お写真等については、崇敬の念ある方はどうぞご自由にお撮りください」とのコメントも出されています。基本的なマナーを守り、参拝した思い出に写真を撮影することは問題ないと言えます。逆にいえば、「写真ばえする」だけの場所としてしかみていない、崇敬の念のない人は「崇敬者」ではないということです。
注意: 現地のルールは予告なく変更される可能性があります。必ず事前に公式案内をご確認ください。
神社庁や文化庁も、宗教施設における文化財保護の重要性を繰り返し発信しています(出典:文化庁公式サイト)。参拝者一人ひとりの行動が、神社の未来を左右するという意識を持つことが大切です。
アクセスと交通手段

対馬は公共交通機関が限られているため、和多都美神社や海神神社へのアクセスはレンタカーや貸し切りタクシーを利用することになります。例えば、厳原を起点とした場合、厳原と海神神社の間が約50km(所要時間1時間~1時間半)、海神神社と和多都美神社との間が約20km(所要時間30分前後)、厳原と和多都美神社との間が約40km(所要時間1時間前後)となります。
このように、和多都美神社と海神神社の2社をまわると移動時間だけで3時間はかかりますので、特にレンタカーを利用する場合は事前にルートと所要時間を確認しておくことをおすすめします。対馬には山間部や細い道も多く、夜間や悪天候時は特に注意が必要です。移動時間はあくまで目安であり、余裕を持った計画が求められます。
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まとめ:対馬わだつみ海神神社2社の歴史・見どころ・御朱印ガイド
対馬わだつみ海神 神社は、神話・歴史・現代社会の課題が交差する非常に奥深い存在です。式内社の和多都美神社と、一宮の海神神社との、どちらの神社が正しい、優れているという単純な話ではなく、それぞれが異なる役割を担いながら対馬の信仰を支えてきました。
和多都美神社と海神神社のいずれも御朱印を授与いただけます。海神神社の御朱印を直書きで授与いただきたい場合には、先に海神神社を参拝し、次に和多都美神社を参拝すると移動の無駄がなくスムーズです。ただし、和多都美神社の授与所に書き手の方が不在の場合もありますので、注意が必要です。
和多都美神社と海神神社に訪れる際は、最新の公式情報を確認し、参拝時は基本的なマナーを守り、神域に対する敬意を第一に行動することが何より重要です。正確な情報は必ず公式サイトをご確認ください。
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